ArtレンズのF1.8ズームとF1.4単焦点


 SIGMAのArtレンズには18-35mm F1.8と50-100mm F1.8という二本のF1.8通しズームレンズがある。
 これらはAPS-C専用だが、ズームレンズの使い勝手をそのままに単焦点並と評価の高い解像力を享受できる。個人的にはAPS-Cフォーマットを使っているならばこの二本は迷わず買うべきと思っているくらいだ。

 しかしArtレンズはF1.8通しズーム以外にF1.4単焦点も様々な焦点距離がラインナップされている。この内20mm、24mm、35mmは18-35mmと、50mm、85mmは50-100mmと焦点距離がかぶる。
 そこで違いとして気になるのはF1.8とF1.4の口径比の違いと、解像力だろう。
 以前、18-35mmと各単焦点の比較を行ったが、当時はSD1のOVFをキヤノンのアングルファインダーで2倍に拡大したものでピント合わせを行っていたため厳密なピント合わせが不可能だった。現在、LVに拡大MFが可能なsd Quattroシリーズがあるため厳密にピントを追い込むことが簡単にできるようになった。そこで改めて比較画像を撮影しなおした。
 条件はsd Quattro HのDCクロップモードで無限遠の点光源を撮影。中央でピントを合わせた後に周辺部を撮影する場合はピントの合わせ直しはしない。周辺部は写真左下のクロップを載せる。現像は行わずRAW内jpgで比較する。


・18-35mm比較
20mm中央
Art 20mmArt 18-35mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 単焦点もズームも開放から全く問題なく写っている。

20mmAPS-C周辺
Art 20mmArt 18-35mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 20mm単焦点の周辺部があまり良くないことは知っていたが、F2.8を比べると18-35mmのほうが優秀なのではないかとすら思ってしまう。開放付近ではサジタルかメリディオナルかの違いはあれどどちらも流れている。

24mm中央
Art 24mmArt 18-35mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 単焦点開放ではほんの少し甘さが見える。F1.8では単焦点側が極僅か優れているが、ほぼ同等。18-35mmの優秀さが光る。

24mmAPS-C周辺
Art 24mmArt 18-35mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 点光源を見ると単焦点のほうが優秀だが、後ろの建物は18-35mmのほうが早く改善している。

35mm中央
Art 35mmArt 18-35mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 単焦点側、ピントは合わせたはずだがF4.0くらいまで甘い。18-35mmはF2.8でほぼ完璧。

35mmAPS-C周辺
Art 35mmArt 18-35mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 こちらは単焦点が圧勝。18-35mmはいつものSIGMAらしくテレ端が最も解像するレンズだったはずだが、単焦点と比べると周辺部では見劣りする。


・50-100mm比較
50mm中央
Art 50mmArt 50-100mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 ごくごく僅かに単焦点のほうが優れているような? しかし大差はなくどちらも優秀だ。

50mmAPS-C周辺
Art 50mmArt 50-100mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 意外にも単焦点の開放付近ではコマ・非点が大きく出ている。しかし解像力自体を見るとズームは像面湾曲があるのか低めだ。F5.6でもカッチリとは写っておらず単焦点に軍配が上がる。

85mm中央
Art 85mmArt 50-100mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 どちらも優秀。単焦点の開放では流石にやや甘さがある。F1.8ではズームもほぼ同等だが、わずかに単焦点のほうが良い。

85mmAPS-C周辺
Art 85mmArt 50-100mm
F1.4なし
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6

 単焦点側は開放から驚愕の性能だ。繰り返すが中心でピントを合わせた後に周辺部で合わせ直すことはしていない。85mmの画角とAPS-Cというフォーマットサイズを考えても素晴らしい。
 ズーム側は点光源はF2.8でほぼ点に写っているが、解像力はF5.6でも単焦点側のF1.8と同じくらいだろうか。

 また、比較撮影をしていて気付いたが、50-100mmは50mm単焦点よりも透過が低い。同条件のSSを比較してみると
50mm F5.6:6秒
50-100mm @50mm F5.6:8秒
 となっており、1/3段ほどSSが遅くなった。他のレンズでは特に違いは出なかったため、50-100mmの透過が悪いというよりも50mm単焦点の透過が良いのだろう。

 さて、これらの比較を見て分かる通り、二本のF1.8ズームはまさに単焦点並と言って過言ではない性能を持っている。50-100mmの周辺部では多少甘さが見えるが、この口径と焦点距離ならばボケで隠れてしまうことが多いだろう。
 どうやら50-100mmはあまり売れていないらしいが、個人的にはこの性能と便利さを知らずにいるのはもったいないとすら思う。確かに多少大きくて重いが、このレンズはその程度のデメリットは打ち消してお釣りが来るくらいのポテンシャルは持っている。
 私はSIGMAのレンズに慣れたおかげで50-100mmを特に重いと思わなくなってしまった。

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