Foveonのモノクロと高感度耐性

SD1 Merrill ISO6400 RAW内jpg

 Foveonは高感度に弱い。常識である。
 しかし、ことモノクロにおいてはそうとも言いきれないのだ。

 トップの写真はSD1 Merrillで適当にカラフルなものをISO6400で撮った際のRAW内埋め込みjpgである。写真というより現代アート、カメラというよりノイズ生成器だ。見るに堪えない。
 500*500切り出しが以下。

SD1 Merrill ISO6400 切り出し

 X3FをSPPで現像するといくらかマシにはなる。具体的にはノイズの塊が油絵に進化する。

SD1 Merrill ISO6400 SPP現像 パラメータ全リセット・ノイズリダクション真ん中

同上切り出し

 ちなみにISO100では下のようになる。何の問題もない。(ピントは追い込んでいない)

SD1 Merrill ISO100(参考)

 これはsd Quattroでも同じ傾向だ。QuattroではMerrillよりいっそう色が死ぬ。

sd Quattro ISO6400 RAW内jpg

同上切り出し

sd Quattro ISO6400 SPP現像 パラメータ全リセット・ノイズリダクション真ん中

同上切り出し

sd Quattro ISO100(参考)

 さて、この現代アートだが、SPPのモノクロモードで現像するとそこまで悪いものではなくなる。酷い有様である原因は主に色ノイズだ。しかしモノクロでは色ノイズは関係なくなり、輝度ノイズのみが問題となる。そして輝度ノイズのみを見ると、ちょうどフィルムグレインのような効果をもたらしてくれる。

SD1 Merrill ISO6400 SPPモノクロ現像パラメータ全リセット・ノイズリダクション真ん中

同上切り出し

 さすがに最高感度のISO6400かつノイズリダクション真ん中ではノイズが多いが、カラーと見比べるとFoveonでも高感度が実用域として見える。

 また、フィルムグレイン的なノイズも許容できない人にも選択肢がある。
 SPPではモノクロ現像時、RGBの割合を変更できる。そこでBを100%とすればISO6400でもかなりノイズの少ない画像が得られるのだ。

SD1 Merrill ISO6400 モノクロ現像B100%

同上切り出し

 さすがにFoveon特有の解像感は失われるが、用途によっては十分ではないだろうか。また、この現像もノイズリダクションは真ん中なので解像感・ノイズはある程度調整が効く。
 Foveonの3層構造は、上から主に青色を感知するトップ層、主に緑色を感知するミドル層、赤色を感知するボトム層となっているため、入射する光全てを受け止めるトップ層はS/N比に優れているのだ。

 ただし、当然ながら青色だけでは判別できない色は消えてしまう。

ISO100

ISO6400 B100%

 また、Foveonでモノクロを撮影する場合には2つの大きな利点がある。

1. 全画素で輝度情報を得られる。
 現代のほぼすべての撮像素子はベイヤー形式、もしくはX-Trans CMOSであるが、これらの撮像素子は輝度情報を緑画素でしか得ていない。緑画素は全体の50%しかなく、ほかの画素はモノクロにおいてはほぼ役立たずとなっている。
 Foveon以外で全画素で輝度情報を取得できるカメラはライカM Monochromeくらいしかない。これはカラーも撮れるFoveonに比べてモノクロ専用で、ボディのみで約100万円だ。

2. RGB各色の情報を得られる。
 ライカM Monochromeは本当に輝度情報しか得られない。
 対してFoveonの場合はトップ層・ミドル層・ボトム層それぞれで色情報も得ている。
 これによって青のみに感光するレギュラーフィルム、青と緑に感光するオルソフィルム、すべての光に感光するパンクロフィルムをそれぞれシミュレートするような使い方が可能だ。
 通常のベイヤー撮像素子でもレギュラーやオルソのシミュレートは可能だが、前述の通り輝度情報を全体の50%でしか得ていない。
 全画素で輝度情報と色情報を得ることができる撮像素子はFoveonだけである。

 以上から、モノクロ写真を撮るデジタルカメラとしてはFoveonこそが最高の選択肢である。モノクロに興味のある方はFoveonを試してみてはいかがだろうか。

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