毎年恒例のPeak DesignのKickstarter。今年も出資。

 今回、新しいCapture v3とPro Pad、SLIDEのセットに出資し、ついでに新しいLEASHとCUFFも購入。
 LEASH以外は旧版も持っているので比較を行う。

 まずはCapture v3。かなり大きい変更があった。
 第一に小型化された。重量もv2比で3割減とある。付属のStandard Plateも薄型になった。
 しかし小型化にあたって悪くなった点もある。

 まず、薄型化されたStandard PlateはCapture v1、v2で使用できなくなった。
 カメラを横から入れれば取り付けはできるのだが、縦から入れるとCaptureの取り付けボルトがカメラ底面と干渉してしまう。


 しかし、これには対策がある。
 Capture v3には従来別売りだったロングクランピングボルトが付属している。


 このボルトをv2に使用すれば取り付けネジの飛び出しがなくなり、v2でも底面が干渉しなくなる。


 これは公式にアナウンスされた使い方ではないので、その他の不具合が発生する可能性は否定できない。

 二つ目に、取り付け幅が狭くなった。


 このため、私が愛用しているthinkTANKphotoのRotation180 Proでは肩紐への取り付けができなくなっている。


 v2では幅広な肩紐にも対応できる幅があったが、v3ではご覧のとおりだ。


 第三に、Capture Toolが使用できなくなった。


 プレート取り付け部よりもネジ頭が奥まった場所についているため、Capture Toolをはめることができない。


 そもそも、ネジ頭の形状が変更されているためCapture Toolが噛み合わなかった。
 このため取り付けは手締めでしか行えなくなっている。
 しかし前述のロングクランピングボルトならば六角での締め付けとなるため、Capture Toolの六角部分で強固な締め付けが可能だ。
 ベルトなどに付ける場合、ロングクランピングボルトは背面のネジの飛び出しが体に当たり使えないため、通常のボルトにも六角穴を付けていてほしかった。

 他にも小型軽量化のためにスポイルされた機能がある。

・ベース逆付けによるアンカー取り付け

・右側のスプリング

・ベースの三脚穴
・プレートロック機構

 これらのスポイルされた機能は、正直なところ冗長で活用している人は殆どいなかったのではないかと思われる。特にベースの三脚穴は活用のしようがなかった。何のために付いていたのだろうか?
 しかしプレートロック機構はCapture Lensで使用する際は活用していたので、なくなったのは少々寂しい。

 次にPro Pad。これは率直に言うと改悪としか思えなかった。


 まずこちらも小型化されクッション面積が減った。
 さらに裏面も旧版のほうが柔らかくクッション性は高そうだ。


 取り付けの自由度でも、表面を見て分かる通り縦向きに固定する機能がなくなった。

 こちらもCaptureの小型軽量化の影響でv3では旧版は使用できない。


 しかし縦向きに使用したい場合はv3でもなんとか使用できる。


 縦向きに使用したい人は旧版が無くなる前に確保しておいたほうがいい。
 また、ベース部を通す部分が新型では固く非常に通しにくい。
 最初にも書いたがこれは改悪だ。デザイン面はともかく、機能面では何ひとつ褒める点が見つからない。

 新型CUFF。これはKickstarter以前に改良されたものだ。


 手を通した後の長さ調整が簡単になっている。すこし引っ張れば手首部分が締まってくれ、脱落防止には効果が高い。

 また、この世代からアンカーの取付部が多少変更されていた。


 下が新型だ。バネがやや強くなっており、不意の脱落が起こりにくくなったようだ。
 もともと旧型でも脱落したことなんてないが。

 新型LEASHとSLIDE。このLEASHもKickstarter以前の改良だ。


 LEASHは旧型を持っていないので改良点はよくわからない。
 伸縮のスムーズさは伸ばす方向は十分。縮める方向はコツがいり、JETGLIDEと比較すると不合格。一眼レフクラスには細すぎるため使うことはないだろう。

 SLIDEはものすごく、ものすごく良くなった。伸縮のスムーズさは旧型のガッカリ具合とは比較にならず、JETGLIDEにはあと一歩及ばないながらも比肩すると言っていいだろう。惜しむらくはクッション部分が伸縮には使えないために最短時の長さがやや長いことだ。
 すべり止めも新しくなり、耐久性が増したとアナウンスされている。旧型では滑り止め部分が溶け出し服を黒く汚したという報告もあるため、新型では改善されているのではないだろうか。

 LEASHとSLIDEにはこの世代から非常に小さいアンカーマウントが付属している。


 これはCaptureには付けられずアルカ互換でもないのだが、とても小さい。
 私は縦グリの底面に付けた。従来のプレートでは縦グリ使用時に手に当たる部分が大きかったためグリップ感を損なっていたが、このアンカーマウントならばほぼ気にせず使用できる。

 最後に新型アンカー。これもLEASHやCUFFと同タイミングでの改良だ。


 写真は右が第二世代、真ん中が第三世代、左が最新の第四世代。
 これは最高だ。
 ヒモ側の半分がテーパになっているところが最大の特徴となっている。旧型では取付時もアンカーを指で押し込みながらスライドさせる必要があったが、新型では取付部に引っ掛けたあとに軽く引っ張るだけで取り付けできる。
 また、取り外し時もテーパ部分のおかげで外す方向に力をかけやすい。
 紐部分も細くなったために三角環を使用しなくても取り付けができる。GRのような取付部にも付くだろう。
 耐荷重には一抹の不安が残るが、公式発表では第三世代と変わらない90kgを謳っている。実際に第二世代よりは丈夫に思えるし、第二世代はほつれが起きやすかったためそれよりは安心できる。
【2018/06/10追記】
 第四世代(V3)にほつれの問題が発生したため、紐を太くしたV4への交換が発表された。

 今年の新製品はPro Pad以外は順当に良くなっている。惜しむらくはCaptureの取り付け幅が狭くなったことだ。ザックの肩紐などに付けることを想定している人は取り付け幅76mmに適合するか確認したほうがいい。

 SONY(MINOLTA)にはSTFという名レンズがある。
 これは光束周辺部を減光することでとろけるようなボケ味を作り出すものだ。
 同じボケ味改善の効果があるものにDC-Nikkorがあるが、これは球面収差の程度を変えることによって効果を得るもので、STFとは全く原理が違う。
 DC-Nikkorは改善できるのは前ボケ・後ボケのどちらかのみ、かつ収差を加えているため解像力が悪化する。対してSTFは前ボケ・後ボケ両方を同時に改善し、かつ収差の大きい周辺部が減光されることで解像力も向上する。デメリットとしては暗いためシャッタースピードが稼げないことくらいだ。(MFレンズであることは135mm特有のものでSTFの原理からくるものではない。ただしF5.6部分の光束も多少減光されているので、位相差AFが可能な最低輝度が他のレンズより高くなることは考えられる。)

 トップの写真はSTFによるものだ。後ボケも前ボケも非常に滑らかで美しいボケだ。
 しかし、左端の彼岸花の右側にやや違和感を覚える描写がある。


 ここだけボケのエッジが立ってしまっている。ほかのボケが滑らかであるだけあって、ここだけ異質に思えてしまう。

 この描写の原因を考える前に、STFの原理をざっくりと説明する。


 簡便のためレンズは一枚の凸レンズで表している。
 光軸中心・無限遠からの光束が入射する様子を表した図だ。STFではレンズの周辺の光を減光するため、像側の光束の断面を見ると上の丸のようにエッジが現れない。これがとろけるようなボケ味につながっている。通常のレンズでは濃度が均一な丸になる。
 (実際のSTFにおいて減光を担うAPDエレメントは均一な濃さの凹レンズになる。)

 次に点光源の後ボケ状態の模式図を示す。


 ピント面以外からの点光源は像面で焦点を結ばないため、ボケになって写る。

 さて、冒頭のエッジの目立つボケがどのような条件で現れるかだが、これは光源とレンズの間に障害物を置くことで説明できる。


 図はまっすぐな棒状のものを置いた際の模式図である。障害物によって光束の一部が遮られることで、光線の強度が高い中心部でエッジが発生してしまう。
 この障害物がピント面にある場合は、ボケの欠けた部分を障害物が埋めるためにボケが欠けたとは認識されない。しかし前ボケとなる領域にある場合はボケの欠けが目立ってしまう。特に障害物と背景が同色の場合には顕著となる。

 冒頭の写真の場合、おそらく前ボケで写っている彼岸花のおしべでボケが欠けたと思われる。障害物となったおしべ自体は前ボケとなって見えないほど溶け込んでしまったためにボケの欠けだけが残ったのだ。

 このボケの欠け自体はSTFに限らずどんなレンズでも発生する。しかしSTFの通常のボケが滑らかすぎるためにエッジが立っている部分が目立ってしまった。

 STFでボケのエッジを立たせないためには、このような光束の一部だけを遮る小さな前ボケは発生しないよう考える必要がある。とはいえ出先でそこまで考えて画作りをするのは難しい。STFにも弱点があるということだけ頭に入れておけば十分だろう。
SD1 Merrill ISO6400 RAW内jpg

 Foveonは高感度に弱い。常識である。
 しかし、ことモノクロにおいてはそうとも言いきれないのだ。

 トップの写真はSD1 Merrillで適当にカラフルなものをISO6400で撮った際のRAW内埋め込みjpgである。写真というより現代アート、カメラというよりノイズ生成器だ。見るに堪えない。
 500*500切り出しが以下。

SD1 Merrill ISO6400 切り出し

 X3FをSPPで現像するといくらかマシにはなる。具体的にはノイズの塊が油絵に進化する。

SD1 Merrill ISO6400 SPP現像 パラメータ全リセット・ノイズリダクション真ん中

同上切り出し

 ちなみにISO100では下のようになる。何の問題もない。(ピントは追い込んでいない)

SD1 Merrill ISO100(参考)

 これはsd Quattroでも同じ傾向だ。QuattroではMerrillよりいっそう色が死ぬ。

sd Quattro ISO6400 RAW内jpg

同上切り出し

sd Quattro ISO6400 SPP現像 パラメータ全リセット・ノイズリダクション真ん中

同上切り出し

sd Quattro ISO100(参考)

 さて、この現代アートだが、SPPのモノクロモードで現像するとそこまで悪いものではなくなる。酷い有様である原因は主に色ノイズだ。しかしモノクロでは色ノイズは関係なくなり、輝度ノイズのみが問題となる。そして輝度ノイズのみを見ると、ちょうどフィルムグレインのような効果をもたらしてくれる。

SD1 Merrill ISO6400 SPPモノクロ現像パラメータ全リセット・ノイズリダクション真ん中

同上切り出し

 さすがに最高感度のISO6400かつノイズリダクション真ん中ではノイズが多いが、カラーと見比べるとFoveonでも高感度が実用域として見える。

 また、フィルムグレイン的なノイズも許容できない人にも選択肢がある。
 SPPではモノクロ現像時、RGBの割合を変更できる。そこでBを100%とすればISO6400でもかなりノイズの少ない画像が得られるのだ。

SD1 Merrill ISO6400 モノクロ現像B100%

同上切り出し

 さすがにFoveon特有の解像感は失われるが、用途によっては十分ではないだろうか。また、この現像もノイズリダクションは真ん中なので解像感・ノイズはある程度調整が効く。
 Foveonの3層構造は、上から主に青色を感知するトップ層、主に緑色を感知するミドル層、赤色を感知するボトム層となっているため、入射する光全てを受け止めるトップ層はS/N比に優れているのだ。

 ただし、当然ながら青色だけでは判別できない色は消えてしまう。

ISO100

ISO6400 B100%

 また、Foveonでモノクロを撮影する場合には2つの大きな利点がある。

1. 全画素で輝度情報を得られる。
 現代のほぼすべての撮像素子はベイヤー形式、もしくはX-Trans CMOSであるが、これらの撮像素子は輝度情報を緑画素でしか得ていない。緑画素は全体の50%しかなく、ほかの画素はモノクロにおいてはほぼ役立たずとなっている。
 Foveon以外で全画素で輝度情報を取得できるカメラはライカM Monochromeくらいしかない。これはカラーも撮れるFoveonに比べてモノクロ専用で、ボディのみで約100万円だ。

2. RGB各色の情報を得られる。
 ライカM Monochromeは本当に輝度情報しか得られない。
 対してFoveonの場合はトップ層・ミドル層・ボトム層それぞれで色情報も得ている。
 これによって青のみに感光するレギュラーフィルム、青と緑に感光するオルソフィルム、すべての光に感光するパンクロフィルムをそれぞれシミュレートするような使い方が可能だ。
 通常のベイヤー撮像素子でもレギュラーやオルソのシミュレートは可能だが、前述の通り輝度情報を全体の50%でしか得ていない。
 全画素で輝度情報と色情報を得ることができる撮像素子はFoveonだけである。

 以上から、モノクロ写真を撮るデジタルカメラとしてはFoveonこそが最高の選択肢である。モノクロに興味のある方はFoveonを試してみてはいかがだろうか。