数日前、twitterのSIGMAクラスタでSIGMA Photo ProのGPU高速化を行った際に出力が変わるという話題が出た。
 試したところ私の環境でも差が出たので記録しておく。
 検証は話題になったときのSPP6.5.3ではなく、最新の6.5.4を使用している。

・環境
SIGMA Photo Pro Ver:6.5.4
PC:MacBook Pro (Retina, 15-inch, Late 2013)
GPU:Intel Iris Pro
GPUドライバVer:1.2

・サンプル写真
【sd Quattro H, 135mm F1.8 DG HSM | Art 017, @135.0 mm F1.8, 1/800sec, ISO100】

・現像設定
全パラメータ0、ディティールスライダー真ん中、ノイズリダクション真ん中、16bit TIFFに出力。

・合焦部切り出し(400*400)
GPUなし

GPUあり

・上部分の差の絶対値(レベル調整0-255 → 0-10)

 見ての通り差は出た。出たが、レベル調整をしてようやく認識できるレベルだ。等倍切り出し画像を見ても、両方を見比べてようやくごくごく僅かに違いがあることに気付くレベルだ。GPUなしのほうがほんの少しだけシャープに見える。
 差の絶対値の色に着目すると、元の写真で緑色しかないような部分では僅かに緑色もあるが、概ね灰色だ。ヒストグラムも各色の山に大きな差異はない。このことでGPUによる差は色への影響が少なく、ほぼ輝度への影響であることがわかる。

 また、主に輪郭線部分で差が出ているようなので、5pxのガウスぼかしをかけた状態での差の絶対値も作ってみた。

・ぼかし後差の絶対値(レベル調整0-255 → 0-10)

 見ての通りほぼ差はなくなった。真っ黒なだけに見えるが、ほんの少しだけ差は出ている。
 この結果からGPUの影響は
・シャープネスへのものが大きい
・シャープネス以外の影響は1ピクセル単位の微小な点でのものである
 ということがわかる。

 私の環境での結果では、この程度の差は考慮する意味なしだ。
 そもそも差の絶対値を見るまでもなくGPUありなしを比べれば差異はほぼなしとしていいだろう。

 しかし、twitterでは環境によってノイズリダクションの程度が変わりノイズが増えるという報告もある。この差異は環境しだいで変わる可能性があるので、自分のPCで一度確かめてみるべきかもしれない。
 sdQ無印・sdQHには電子シャッター及び電子先幕シャッターが搭載されていない。つまりシャッターショックは避けられない。この仕様により僅かに解像感を損なう可能性がある。
 そのシャッターショックだが、実際に使用していてSD1よりもだいぶ大きいような気がしていた。そこでsdQHのシャッターショックの大きさを定量的に測定してみた。

  • 測定方法
・レンズは120-300mm F2.8 Sports + TC-2001を使用し、焦点距離は300mm(テレコンで600mm)に固定する。
・三脚はVANGUARD VEO265CBを使用し、レンズの三脚座にPeak DesignのStandard Plateを取り付け三脚と固定する。
・三脚は脚及びエレベータを全て伸ばした状態とする。
・撮影条件はF5.6開放・ISO100でシャッタースピードを1秒とする。
・被写体は星とし、sdQHの拡大LVでピントを合わせた後固定する。
・SD1、SD1ミラーアップ、sdQHの3種類で3枚ずつ撮影する。
・撮影後の写真を閾値128で2値化し、星の最も幅の大きい箇所の縦幅[pixel]を記録する。
・SD1とsdQHでは画素ピッチが違うため、画素ピッチから像面での縦幅[μm]を算出し評価する。

  • 撮影写真

SD1
SD1ミラーアップ

sdQH



  • 2値化後
SD1

SD1ミラーアップ

sdQH



  • 結果

結果として、ショックの大きさはsdQH>SD1>SD1ミラーアップとなった。
 シャッターショックを嫌うような撮影ではSD1のミラーアップを使用するのが最も良く、ミラーアップしなかったとしてもsdQHよりはショックが少ないようだ。
 この実験方法ではSD1とsdQHのフランジバックの誤差によるピントずれの影響が考えられる。とはいえ横幅で同じ計算をするとSD1もsdQHも同じになるので影響は大きくはないはずだ。
 sdQ発表時にミラーレス化したことへの理由のひとつにメカショックの少なさを挙げていたはずだが……このブログでも再三言っているように、SFDをこのメカシャッターでやらせるのもやはり無理があるのではないだろうか。