大口径超広角レンズ、14mm F1.8が発売された。

 現在、所有している広角レンズとしては
・8-16mm F4.5-5.6 DC
・18-35mm F1.8 DC
・20mm F1.4 DG
・14mm F1.8 DG
 あたりが選択肢としてある。(12-24mm F4は持っていない)
 これらをsdQHで使用するとしてDCで1.5倍、DGで1.33倍の換算倍率をかけると、
・8-16mm → 12mm
・18-35mm → 27mm
・20mm → 26.6mm
・14mm → 18.62mm
 となる。このうち8-16mmはSGV以前のレンズで、sdQ系統でAFは公式には非対応であること、周辺に像の流れがあること、F4.5-5.6と暗いこと、暗いゆえに絞っての改善がしにくいことから次点。
 他のレンズは「超広角」と呼べる焦点距離ではない。
 描写性能・明るさを加味すると、超広角としての選択肢はこの14mmだけと言っていいだろう。

 使ってみての感想だが、まず解像力は素晴らしい。
 さらにかなり寄ることができる。最大撮影倍率自体は1:9.8と低いが、最短撮影距離は27cmとなっている。ワーキングディスタンスで考えると約10cmほどだ。前玉が当たりそうなくらい寄ることができる。
 また、私が所有しているSIGMAのレンズの中でも逆光耐性は指折りの性能だ。85mmや120-300mmなんかは逆光で緑色のフレアが画面を覆い尽くしたが、14mmでは小さなゴーストしか確認できなかった。太陽をフレームに入れてもへっちゃらだ。

 描写性能以外の面では、久々にレンズを重いと感じた。重量自体は85mmや135mmよりも10g軽いくらいなのだが、それらに比べて大きさがさほどでもないので密度感がすごい。
 超広角の特徴とも言える突出した前玉だが、真横から見ると固定式フードよりも飛び出ている。ふとしたときに触ったりぶつけたりしないか気になったので、扱いは多少気を使う。


 以下、作例

_DQH0364
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F2.0, 1/3200sec, ISO100】

_DQH0392
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F8.0, 1/1600sec, ISO100】

_DQH0396
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F5.6, 1/2000sec, ISO100】

_DQH0436
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F5.6, 1/4000sec, ISO100】

_DQH0440
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F5.6, 1/1250sec, ISO100】

_DQH0445
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F5.6, 1/800sec, ISO100】

_DQH0454
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F5.6, 1/2500sec, ISO100】

_DQH0457
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F4.0, 1/400sec, ISO100】

_DQH0459
【sd Quattro H, 14mm F1.8 DG HSM | Art 017, @14.0 mm F4.0, 1/800sec, ISO100】

 換算18.6mmの広さ・強烈なパースが気持ちいい。
 灯台の写真が一番ゴーストが酷かったものだが、それでもこの程度で収まっている。太陽をフレームに入れたものでも1枚目はほんの少しゴーストは出ているが、2枚目はゴーストすら見当たらない。ここまで逆光に強いレンズはSIGMAにはなかなかない。
 いままでは単焦点中心では広角がカバーできないために18-35mmを持ち出すことが多かったが、このレンズのおかげで単焦点中心の撮影が捗りそうだ。

 SIGMAのsd Quattroが発売されてから、本日7月7日で一周年となる。
 sdQは発売日に予約購入したので、私がsdQを触ってからもちょうど一年が経った。とはいえ昨年12月以降はもっぱらsdQHばかり使っていたのだが、まあ大きな違いはないとしてsdQ無印・sdQH双方を含めたインプレッションをまとめる。

_DQH0332
【sd Quattro H, 18-35mm F1.8 DC HSM | Art 013, @35.0 mm F4.0, 1/100sec, ISO100】

 昨年の2月23日、sd Quattroが発表された。その日に書きなぐった記事がこれだ。

sd Quattro / sd Quattro Hが発表された | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2016/02/sd-quattro-sd-quattro-h.html

 当初、OVFが好きな私にはミラーレス化した後継機には非常に否定的だった。今読むとさすがにひどすぎたかと少々反省している。
 CP+でも試作機を試したが、EVFの表示品質の低さとバッファ開放速度の改善の2点に目が行った。

_DQH0327
【sd Quattro H, 18-35mm F1.8 DC HSM | Art 013, @35.0 mm F2.0, 1/200sec, ISO100】

 その後、sd Quattro無印が発売。予約購入。

SIGMA sd Quattro | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2016/07/sigma-sd-quattro.html

 この時点でSD1に比べて非常に快適なカメラだという印象を持った。

 撮影後ほんの1秒程度で確認できるプレビュー、詰まらないバッファと書き込み速度、だいたいのピント位置と色がわかる液晶、画像再生画面の拡大・縮小等レスポンスの良さ、ライブビューでの拡大MF、AWBの正確さ、電池の持ち、長秒露光での電池消費の少なさ。
 どれもSD1に慣れていると感動モノだ。

 また、この記事では挙げていなかったが、何よりもありがたい改善が「AFの正確さ」だった。SD1ではAFで撮影していると精度が低いために非常に歩留まりが悪かったが、sdQになってからはピントを外すということはほぼなくなった。これだけで失敗写真として捨てる割合が激減したのだ。コントラスト式で合わせているので当たり前の話ではあるが、SD1のAFを使っていた身には革命的だった。
 AF速度はこの時点では亀の歩みだったが、動体を撮らない私にはさほど問題になるものでもなく、精度向上の恩恵のほうが大きかった。
 しかしAF面の問題は速度だけではなかった。SGV以前のレンズでのAFが非対応なのだ。
 私の手持ちレンズではほとんどのレンズは問題なかったが、マクロレンズは全てAFが使い物にならなかった(過去形)。
 CP+での試作機で気になった点のひとつであるEVFの表示品質だが、光量が十分でないCP+の会場で短時間試しただけの印象と比較してだが、多少マシにはなった気がする。ただしかなりハッキリとしたコンニャク現象が見られるため、動体を撮る気には全くなれない。

sd Quattro背面液晶のローリングシャッター現象 | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2016/07/sd-quattro_17.html

 遅延も少ないとは言えないレベルだ。
 もう一点のバッファ開放速度だが、こちらも計測して記事にしている。

sd QuattroにおけるSDの速度が与える影響 | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2016/08/sd-quattrosd.html

 こちらもCP+での試作機と比較すると随分と良くなったように思える。 そもそもCP+の時点でSD1より遥かに良かったので、何の不満もない。

_DQH0173
【sd Quattro H, 85mm F1.4 DG HSM | Art 016, @85.0 mm F5.6, 1/640sec, ISO100】

 その後、sd Quattro Hが発売。こちらも予約購入。

SIGMA sd Quattro H | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2016/12/sd-quattro-h.html

 基本的にはsdQ無印よりセンサーが多少大きくなっただけのカメラだ。
 私の個人的意見としては、高精細化よりも広角で撮れることのほうがありがたい。クロップ倍率が無印の1.5から1.33になっている。
 記事内では無印との違いはセンサーサイズのみと書いたが、実はサイズ以外に2点無印より改善がある。AF速度と読み出し速度だ。
 AFに関しては無印の亀の歩みが人の徒歩くらいになった。無論、動体を撮れるレベルではない。また、上にマクロレンズはAF不可と書いたが、sdQHではAFによる合焦が可能になっている。
 読み出し速度の向上では、連射速度が無印の3.6fpsから3.8fpsに微増している。無論、無印だろうがHだろうが連写用途に使える速度ではない。バッファ開放速度自体はデータ量の増加から無印のほうが優秀だった。

sd Quattroとsd Quattro Hの書き込み速度比較 | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2017/04/sd-quattrosd-quattro-h.html

 微々たる変化ではあるがAF速度の向上は嬉しい点だ。

SDQ_0532
【sd Quattro, Art 18-35mm F1.8, @25.0 mm F2.8, 1/100sec, ISO100】

 以上がsdQを使っての印象だ。

 最後に良い点・悪い点をまとめる。


  • 良い点

・AF精度の良さ★★★
 sdQを使っていて一番恩恵を受けたのがここ。
 SD1に比べるとあまりにも、あまりにも快適すぎる。

・バッファ開放速度★★★
 SD1に比べると単写ではバッファの存在を意識することがなくなった。

・AWBの優秀さ★★☆
 AWB、もしくはAWB(色残し)だけでカラー調整を触る必要がほぼなくなった。
 しかしSD1では狂った色を自然な色、目的とする色に合わせる作業自体を楽しんでもいたため、写真を撮るためにカメラを使うのではなくカメラを弄るために写真を撮る人間にはやや物足りなさを感じる。

・色の自然さ★★★
 SD1では赤外線をカットしきれていないためかマゼンタに転ぶことが多かったが、sdQでは自然な色が出る。

・sdQHの大センサー★★★
 所有レンズの多くがDGであり、広角が好きな私にとってはクロップ倍率1.33倍はうれしい。

・液晶の優秀さ★★☆
 優秀というか、あまりにもひどかったSD1に比べて並レベルになってくれた。

・2ダイヤルが2ダイヤルとして使える★☆☆
 SD1の絞り優先で前ダイヤル・後ろダイヤル共にF値の変更が割り当てられているほうがどうかしている。後ろダイヤルが露出補正に使えるようになったため便利になったが、出来て当たり前だ。

・背面に飛び出したファインダー★★★
 鼻が液晶に当たらない。液晶の汚れもなく窮屈さも感じない。

・縦グリップの機能向上★★☆
 SD1のレリーズボタンだけ、ダイヤルすらなくF値を変えることもできない縦グリップから素晴らしい進化を遂げた。とはいえこれもようやく並レベルになったのかもしれないが。
 しかし非煙突式でバッテリーを本体1+縦グリ2の3個を同時に使用できるようになったのは他社に比較しても優れている。できれば3個全てを同時に消費するのではなく、一個ずつ消費する形式であれば最高だった。



  • 悪い点

・SS最高速が1/4000★★★
 SD1では1/8000が切れたのに比べると、このたった1段が辛く感じることが予想以上に多かった。特に晴天時にF1.4レンズを多用することが多い私には1/8000が欲しかった。

・白飛び気味なAE★☆☆
 輝度差が大きいシチュエーションでは、たいてい高輝度部が飛ぶ。sdQを使っている時は常に露出補正を-0.7〜-1.0段掛けっぱなしで使用している。露出補正で問題なく対応できているので大きな問題ではない。

・電子先幕シャッター、電子シャッターがない★★☆
 解像感をウリにするFoveonでこれがないのはお粗末。挙句SFDの7連写をメカシャッターでやらせるのは意味不明。

・SFD使用時、露出補正が不可能な範囲でも何の警告もない★☆☆
 SSの範囲は1/4000〜30秒のため、±3段の露出補正で撮影するには±0段時に1/500〜4秒の範囲でなければ露出補正が不可能になる。例えば±0段でSS8秒の場合、+1段が15秒、+2段が30秒、+3段でも30秒(実質+2段)となり+3段の撮影が不可能になる。
 厳密に調査してはいないが、+側が本来得たい露出よりも暗くなった場合は逆にノイズが増えている印象がある。
 SSが1/500〜4秒から外れた場合は警告を出すべきだ。
【2018/8/13追記】
 ファームアップにより1/500以上の高速シャッターが規制された。なぜか低速側はないようだが……

・グリップ形状★☆☆
 SD1のグリップが優秀過ぎた。あれと比較すると同等以上と評価できるカメラは殆ど無い。
 また、縦グリ非使用時は小指が余る。

・電子ファインダーの品質は高くない★★☆
 遅延、コンニャク現象、像質共に品質が高いとは言えない。動体、特に不規則に動く虫や鳥などを撮るのは不可能と思ったほうがいい。
 まあ、動体を撮るカメラではない。

・AFが遅い★☆☆
 精度を考えればこの程度ストレスにはならない。
 なぜかAF-Cの設定が可能だが、存在意義がわからない。当然動体は撮れない。MFで追うのもファインダーの関係で不可能と思ったほうがいい。
 まあ、動体を撮るカメラではない。

・光軸からオフセットされたファインダー★☆☆
 これはむしろ歓迎されているのかもしれない。右目で覗いたときに光軸が顔の中心に来ること、右手上の縦位置で違和感なく覗ける位置になることを見ると、よく考えられた配置だと思う。
 しかし、MACRO 180mmに2倍テレコンを付けた360mm 2倍マクロで最短付近を撮ろうとすると、自分がどこを覗いているのか全くわからなくなる。たいていファインダー内の景色は意図した位置よりも左側だった。
 光軸上にファインダーがあるSD1ではこのような現象はなかったため、光軸上のファインダーに慣れた人間には極端な条件ではデメリットが現れるのではないかと思う。そして特にメリットを感じたことはない。
 また、私は縦位置を撮る時は残念ながら右手下で撮る。

・絞りプレビューがない★☆☆
 あまり使わないが、ミラーレスで絞りプレビューをする術がないのもどうなのだろうか。


 総じて評価すると、SD1と比較して遥かに快適なカメラに進化している。特にAF精度が素晴らしく、この一点だけで七難隠す。
 発表当初はOVFがないことから不満だらけだったが、実際に使ってみると素晴らしいカメラだった。
 しかしメリットの殆どはLV付き一眼レフでもいいのではないかと思う。LVF-01が装着可能なLV付き一眼レフ、出してくれませんかね。