過去にSD1のCF速度による書き込み時間の変化について調べた。

SD1におけるCFの速度が与える影響 | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2016/03/sd1cf.html

 この記事ではTranscend 400xとSanDisk Extreme Proで6秒程度しか変わらず、ほぼ効果が無かった。

 では、SD1の後継機のsd Quattroではどうなのか、調べてみた。

 使用するSDカードは手元にあった以下の5種類。
・SanDisk Extreme Pro 256GB UHS-I Class3
・Panasonic 32GB UHS-I Class3
・SanDisk Mobile Ultra 8GB UHS-I(microSD)
・東芝 16GB UHS-I(microSD)
・台湾製ノーブランド 4GB Class4(microSD)
 microSDはSanDiskのアダプタを利用した。

 計測条件は
・連写モード
・Mモード、絞り開放、SS1/4000
・バッファフルの12枚まで連写
・連写開始〜書き込みランプ消灯までの時間を計測
 とした。

 結果は以下のとおり。


使用メディア書き込み時間
SanDisk Extreme Pro 256GB UHS-I Class341秒
Panasonic 32GB UHS-I Class353秒
SanDisk Mobile Ultra 8GB UHS-I(microSD)1分25秒
東芝 16GB UHS-I(microSD)49秒
台湾製ノーブランド 4GB Class4(microSD)1分38秒

 この中では最大で60%近くの改善が見られた。また、SD1では最速でも7枚で1分21秒かかっていたことに比べれば、非常に書き込み速度は速くなっている。実際に使用していてバッファ詰まりで困ったことはまだない。
 また、この時間は書き込みランプ消灯までを測ったものだが、バッファ自体はこの時間よりもずっと速く開放される。その様子は下の動画を見てほしい。



 大体だが、Extreme Proを使用した場合は
連射開始〜12枚撮影:2秒
12枚撮影〜バッファ回復:9秒
バッファ回復〜書き込み終了:30秒
 という内訳となっている。

 SD1でのCFごとの速度の違いに比べれば、SDカードによる書き込み速度への影響は大きい。sdQでは可能な限り高速なSDカードを使用したいところだ。
 しかし遅いSDカードを使用していても、SD1に比べればバッファの開放速度が段違いに速い。いままでSD1の書き込み速度に慣れていた身としてはとても快適な速度となった。

 フルサイズはボケが大きい、とは経験的によく知られた話であるが、それを定量的に解説した記事はめったに見ない。
 なので実際に計算を用いてどの程度変化するのか調べてみる。

 使用する計算式は過去に被写界深度に関する記事で紹介したWebページに載っている被写界深度計算の式を用いる。

被写界深度の計算、許容錯乱円径をどのように設定するか? | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2015/11/blog-post_25.html

 ここで紹介したページには下記の式が載っている。

後方被写界深度 = (R^2*δ*F)/(f^2-R*δ*F)
R : 被写体までの距離[mm]
δ : 許容錯乱円直径[mm]
f : レンズ焦点距離[mm]

 この式は以下のように読み替えることができる。

δ = d*f^2/(R*F*(R+d))
δ : 像面上のボケの大きさ(後ボケの場合)[mm]
R : 被写体までの距離[mm]
f : レンズ焦点距離[mm]
d : ピント位置からボケ光源までの距離[mm]

 この式を利用してボケの大きさを計算してみる。


・35mm判換算50mm F1.4 ピント位置1m ボケ光源1mの場合
 35mm判の場合、上記の式をそのまま利用して計算すればいい。
δ = 1000*50^2/(1000*1.4*(1000+1000))
δ = 0.893 [mm]

 また、比較対象として35mm判換算倍率2倍のm4/3を想定する。焦点距離が換算50mmであること、また撮影した画像を35mm判のものと同じ大きさで鑑賞する場合、拡大率も2倍になることを考慮して式を変更する。アスペクト比の違いは無視する。
δ = d*(f/m)^2/(R*F*(R+d))*m
m:35mm判換算倍率

 この式で計算を行うと、
δ = 1000*(50/2)^2/(1000*1.4*(1000+1000))*2
δ = 0.446 [mm]
 となる。

 式をよく見るとmは分子で逆2乗、更に拡大率で1乗されているため、ボケの大きさは換算倍率に反比例することがわかる。
 計算結果は有効数字を3桁で丸めたため正確に2倍にはなっていないが、丸めない場合は正確に2倍となる。
 また、ボケの大きさに関してはF値も換算倍率倍したときと同じ大きさになる(m4/3 25mm F1.4 → 35mm判 50mm F2.8と同等)と言われるが、式を見ればその通りとなるのがわかる。


・実焦点距離50mm F1.4 ピント位置1m ボケ光源1mの場合
 今度は同じ焦点距離のレンズを用いた場合で計算する。
 35mm判の場合は上と同じδ = 0.893 [mm]となる。

 m4/3の場合、計算式は以下となる。
δ = d*f^2/(R*F*(R+d))*m
δ = 1000*50^2/(1000*1.4*(1000+1000))*2
δ = 1.79 [mm]
 式を見ればわかるが、像面でのボケの大きさは同じであり、単純にmがかかるだけなのでボケの大きさは換算倍率倍になる。
 同じレンズを35mm判とAPS-Cなどで使った場合は、画角は全く異なるがボケの大きさ自体は小フォーマットのほうが大きく見えることになる。


・実焦点距離50mm F1.4 ピント位置35mm判で1m、m4/3で35mm判と同一像倍率となる距離、ボケ光源1mの場合
 同じレンズを用いて、メインの被写体が同じ大きさに写る条件で考える。
 35mm判でのボケの大きさは同じδ = 0.893 [mm]。

 m4/3ではまず撮影距離を求めなければいけない。
 35mm判で50mmレンズを使用し、撮影距離1mのときに写る範囲が換算倍率mのときに同じ範囲となる撮影距離を求める。
 この距離は、過去記事の大きさと距離のわかっている被写体に対して所望の大きさで撮影するのに必要な焦点距離の式を使えばわかるが、単純に換算倍率倍になる。m4/3の場合は2mだ。
 この条件では
δ = d*f^2/(R*m*F*(R*m+d))*m
δ = 1000*50^2/(1000*2*1.4*(1000*2+1000))*2
δ = 0.595 [mm]
 となる。
 換算倍率ぶんだけ小さくなるような単純な計算にはならないが、他の距離条件でもボケは小さくなる方向だ。

 以上の計算から、経験上わかりきった話ではあるがやはりフォーマットサイズが大きい方がボケが大きくなることがわかる。2番目の条件だけは小フォーマットのほうがボケが大きいが、撮影される写真があまりにも違ったものになるのであまり参考にはならないだろう。