フォーカシングスクリーン:固定式、全面マット

 SD1の仕様表にはこう書いてある。
 では、この金具はなんだろう?


 明らかにスクリーンを取り外せそうな金具がある。メンテナンスの観点からもここからスクリーンを取り出せるようにしていると考えて間違いない。
 とはいえ、取り出したところで交換用のスクリーンを持っていない。別にスクリーンにゴミが挟まったわけでもないし、外してみたところで何もできない。
 ならば構造もよくわかっていない素人が触ってもリスクがあるばかりでなんの意味もない。というわけで触ってこなかった。

 しかし、SD1の交換用スクリーンが売っていた。台湾で。

Focusing Screen
http://www.focusingscreen.com

 非純正のスクリーンはカメラを便利に使いたい場合は手を出してはいけない。露出計が狂うからである。というのも今の一眼レフの露出計はペンタプリズム部に配置されているため、スクリーンを通った後の明るさを見ているからだ。拡散性が強いスクリーンに交換すればオーバーに、弱いスクリーンに交換すればアンダーになってしまう。そのためスクリーンが交換できるカメラでは設定に使用中スクリーンを選択する項目がある。
 などという理屈は百も承知で見つけたその日に注文した。面白そうだったんだもの。

 このスクリーンはNikonのFM3A用のK3型スクリーンを加工しているようだ。
 FM3Aはマニュアルフォーカスのため、スクリーンには期待を持てそうだ。K3型スクリーンはスプリットイメージ・マイクロプリズムによるピント合わせが可能で、スプリット部分も素通しではなくマット面になっている。

 交換手順は販売ページにも載っているが、日本語の情報が見つからなかったので一応解説していく。
 しかしこの手順解説ページで使っているSD1、ライカRマウントに換装してある。初めて見た。

 まずIRフィルタ兼プロテクタを取り外す。プロテクタの枠に矢印があるのでその方向に押せば簡単に外れる。


 そしてカメラをひっくり返した状態で件の金具を押す。

 ここでカメラをひっくり返さずにいると、スクリーンがミラーに落下して傷をつける可能性がある。
 フォーカシングスクリーン交換式のカメラではこの枠がヒンジでつながっていてそのような心配がないように作られているが、ユーザーによる交換を想定していないカメラなので仕方がない。

 押しながら上に持ち上げると枠が取り外せる。


 私はこの後カメラをひっくり返してスクリーンを取り出した。


 が、ひっくり返すのはやめておいたほうがいいかもしれない。
 写真では金色の枠が一緒に出てきているが、この枠は取り出すべきではない。出してしまった場合は元の場所に戻そう。

 あとは新しいスクリーンを向きに注意して取り付け、逆順でパーツを戻すだけだ。


 というわけでまずは露出計のズレを確認する。
 日没後、同条件で白い壁をピント位置無限遠、絞り優先オートで5回ずつ撮影したときのシャッタースピードがこちら。


 これを見る限り、評価測光で使う分には大きな影響はなさそうだ。
 K3スクリーンは中央部にスプリットイメージ・マイクロプリズムがあるため、スポット測光・中央部分測光ではアンダーになっている。

 次は過去記事の「フォーカシングスクリーンの拡散性を実測する」で行ったテスト。
 条件は過去記事と同一とした。マット面の明るさを見るために中央からずらした状態でテストしている。その結果が以下となった。


 なんとも腑に落ちない結果だ。F3.2から一旦変化がなくなるが、F1.6〜F1.4までくると僅かに変化が出ている。追試すれば結果は変わるのではないだろうか。
 自分で絞りを変えながらファインダーを見ていると、概ねF2.2までで明るさの変化を感じ取れなくなる。
 露出計も殆ど狂いが出ていないことを考えれば、SD1 Merrillと同じF2.2くらいまでの光束が見えていると考えられる。
 定量的・客観的な結果を求めて拡散性測定をしているが、今回の結果は信用出来ない。でももう一度機材をセットするのは面倒なので再テストはやらない。

 そしてピント精度の確認。
 MACRO 105mm F2.8の開放でMF。「12」の「2」部分にピントを合わせた。


 ピントはちゃんとあっているようだ。調整は不要だった。

 このスクリーンでひとつ期待していたものがある。それは8-16mm F4.5-5.6でのMF改善だ。
 8-16mmは広角端で有効径1.78mmと、私が持っているレンズの中で最も小さい。これで遠景をMFすると、ピントリングを回しても回してもピントがあっているようにしか見えないのだ。
 しかしスプリットイメージ・マイクロプリズムならばもしかしたら……と思っていた。
 試してみたところ、スプリットイメージ部分で僅かに像が左右にズレるため、全面マットよりはいくらかピント合わせはしやすかった。
 とはいえやはり合わせにくい。よほどのことがない限りAFで使うだろう。

 もしかしたらSAマウント機の中では最後の光学ファインダー機になるかもしれないSD1 Merrill。
 sd Quattroが一眼レフではなくミラーレスだったため、まだまだ頑張ってもらわなければならない。


 たのしい!


 まさかまさかの。

 私はSIGMA信者と呼ばれる人種だ。社長のインタビューは欠かさず読み、「これは出す」「これは出さない」「これは答えられない」といった内容も記憶していて、噂やリーク情報も見ている。50-100mm F1.8も焦点距離まではわからなかったが、F1.8ズームだろうなぁとは思っていた。SD1後継機に関しても今日発表があることはわかっていた。
 だが、ミラーレスとは全く予想外だった。

 以前、「SD1後継機に望むもの」という記事を書いた。この記事の妄想がどの程度実現されただろうか。

sd Quattro | カメラ | SIGMA GLOBAL VISION
http://www.sigma-global.com/jp/cameras/sd-series/

1. Foveon X3 Quattroセンサ搭載
 まさかここから当たらないとは。
 APS-Hサイズの新センサー以外に、オートフォーカスが「方式 位相差検出方式 + コントラスト検出方式」となっているところを見れば、像面位相差が追加されているものと思われる。

2. ライブビュー搭載
 ライブビューどころかミラーレスだ。
 私を含めSD1に他社製レンズをつけたことがある人の懸念と「ピントさえわかればモノクロでも……」という心配は全くいらなかったようだ。

3. 処理速度・書き込み速度改善
 最大撮影枚数はSD1の7コマから14コマ(Hは10コマ)になった。しかしバッファフルからの復帰時間は触ってみないとわからない。
2016/06/26追記
 sdQの連続撮影枚数は12コマへ変更された。

4. ファインダーの改善
 そもそもミラーレスになってしまった。
 EVFは236万画素の倍率1.09倍、アイポイント21mm。
 気になるのは無印もHも倍率が1.09倍と表記されていること。これはそのまま読み取ればHのほうがファインダーが大きいと読み取れる。どういうことだろう? 本当にHのほうがファインダーが大きい?
 それ以外ではファインダーの背面側への飛び出し量が大きいため、鼻の圧迫感が少なそうに見える。光軸の右側にオフセットされたEVFはやや覗きにくそうだが、縦グリップ使用時は使いやすい位置に来るものと思われる。こんなところだろうか。
2016/06/26追記
 ファインダー倍率が訂正された。
 無印が約1.10倍、Hが0.96倍となる。35mm判換算ではどちらも同じになるので、ファインダーの大きさはどちらも同じだ。

5. 電子先幕シャッターの搭載
 搭載されていないようだ。Foveonの解像度を活かすならば付けるべきだと思っているが、まあ解像感で勝るMerrillにないのにQuattroにあったってしょうがないとも少し思う。

6. バッテリー容量の増加
 まさか本当にバッテリーを変えてくるとは思わなかった。
 前の記事では変えて欲しいといったが、むしろ同じだったほうがsdQ購入時にチャージャーが手に入るので型番22で揃えやすかった。

7. 外観デザインはどうなる?
 以前ちらりと「SD1後継機のデザインは普通のカメラ」という情報があったが、どこも普通ではなかった。

8. AF性能はどうなる?
 なるほど、ミラーレスならAFセンサいらないね!


 APS-Hの撮像素子は画素ピッチは同一のようだ。最低限のリソースでより大きい撮像素子を採用してきた。


 他、仕様表などを眺めて思ったこと。

・シャッター速度 1/4000秒~30秒、Bulb (バルブ設定時は最大で2分)
 なんでスペックダウンした?

・内蔵フラッシュなし
 ないこと自体はいいが、1灯でリモート発光できるのだろうか? できないならばもう1灯買い足さなければならない。

・質量 約625g (電池、カード除く)(無印の場合)
 SD1に比べてさほど軽くもない。
2016/06/26追記
 Hの質量が追加されていた。630gと無印に比べて5gの違いがある。センサとシャッターの分だろうか。

・グリップ形状
 SD1よりもグリップ感は落ちそうだ。

・APS-Hに対応するDCレンズは?
 DCレンズのうちAPS-Hで使えるもの、使えないもの、クロップモードの搭載非搭載、クロップ時のRAWの取り扱いについて教えてほしい。


 わりと投げやりな書き方で気付いたかもしれないが、正直な感想として落胆している。イライラもしている。
 sd Quattro Hはサブ用途で買う。買うが「これしかないならしゃーない、買うか……」というテンションで買う。買ってもメインにはならない。メインカメラは変わらずSD1 Merrillだ。

 フォトキナでOVF機が出るという奇跡が起これば涙を流して喜び、財布が血を吐こうとも買うが、無理だろう。SIGMAがSAマウント機を2機種一挙にラインナップするというだけで随分思い切っている。
 AマウントOVF難民をネタにしていたが、なんのことはない、SAマウントもOVF難民になってしまった。

2016/3/3追記
 CP+で触ったファームウェアバージョン0.0.3は以下のような感じだった。
・ファインダーの品質はよくない。
・ピーキングが少々見辛い。が、ピーキングの色にもよるだろう。
・背面に出っ張った接眼部がとてもいい。眼鏡越しに覗いていて鼻が液晶に当たらない。
・右手下縦位置でも覗きづらさは感じなかった。
・バッファフルからの復帰は7枚まではサクサク開放された。しかし8〜14枚目の開放速度はMerrill並。
・2ダイヤルがようやく2ダイヤルらしく使えるようになった。Aで後ダイヤルが露出補正として働く。
・ブラケットの設定の仕方確認するの忘れた。

2016/7/9追記
 無印が思ったより安かったため、無印も購入した。

2016/12/25追記
 sd Quattro Hを購入。