フォーマットサイズによるボケ量の変化


 フルサイズはボケが大きい、とは経験的によく知られた話であるが、それを定量的に解説した記事はめったに見ない。
 なので実際に計算を用いてどの程度変化するのか調べてみる。

 使用する計算式は過去に被写界深度に関する記事で紹介したWebページに載っている被写界深度計算の式を用いる。

被写界深度の計算、許容錯乱円径をどのように設定するか? | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.jp/2015/11/blog-post_25.html

 ここで紹介したページには下記の式が載っている。

後方被写界深度 = (R^2*δ*F)/(f^2-R*δ*F)
R : 被写体までの距離[mm]
δ : 許容錯乱円直径[mm]
f : レンズ焦点距離[mm]

 この式は以下のように読み替えることができる。

δ = d*f^2/(R*F*(R+d))
δ : 像面上のボケの大きさ(後ボケの場合)[mm]
R : 被写体までの距離[mm]
f : レンズ焦点距離[mm]
d : ピント位置からボケ光源までの距離[mm]

 この式を利用してボケの大きさを計算してみる。


・35mm判換算50mm F1.4 ピント位置1m ボケ光源1mの場合
 35mm判の場合、上記の式をそのまま利用して計算すればいい。
δ = 1000*50^2/(1000*1.4*(1000+1000))
δ = 0.893 [mm]

 また、比較対象として35mm判換算倍率2倍のm4/3を想定する。焦点距離が換算50mmであること、また撮影した画像を35mm判のものと同じ大きさで鑑賞する場合、拡大率も2倍になることを考慮して式を変更する。アスペクト比の違いは無視する。
δ = d*(f/m)^2/(R*F*(R+d))*m
m:35mm判換算倍率

 この式で計算を行うと、
δ = 1000*(50/2)^2/(1000*1.4*(1000+1000))*2
δ = 0.446 [mm]
 となる。

 式をよく見るとmは分子で逆2乗、更に拡大率で1乗されているため、ボケの大きさは換算倍率に反比例することがわかる。
 計算結果は有効数字を3桁で丸めたため正確に2倍にはなっていないが、丸めない場合は正確に2倍となる。
 また、ボケの大きさに関してはF値も換算倍率倍したときと同じ大きさになる(m4/3 25mm F1.4 → 35mm判 50mm F2.8と同等)と言われるが、式を見ればその通りとなるのがわかる。


・実焦点距離50mm F1.4 ピント位置1m ボケ光源1mの場合
 今度は同じ焦点距離のレンズを用いた場合で計算する。
 35mm判の場合は上と同じδ = 0.893 [mm]となる。

 m4/3の場合、計算式は以下となる。
δ = d*f^2/(R*F*(R+d))*m
δ = 1000*50^2/(1000*1.4*(1000+1000))*2
δ = 1.79 [mm]
 式を見ればわかるが、像面でのボケの大きさは同じであり、単純にmがかかるだけなのでボケの大きさは換算倍率倍になる。
 同じレンズを35mm判とAPS-Cなどで使った場合は、画角は全く異なるがボケの大きさ自体は小フォーマットのほうが大きく見えることになる。


・実焦点距離50mm F1.4 ピント位置35mm判で1m、m4/3で35mm判と同一像倍率となる距離、ボケ光源1mの場合
 同じレンズを用いて、メインの被写体が同じ大きさに写る条件で考える。
 35mm判でのボケの大きさは同じδ = 0.893 [mm]。

 m4/3ではまず撮影距離を求めなければいけない。
 35mm判で50mmレンズを使用し、撮影距離1mのときに写る範囲が換算倍率mのときに同じ範囲となる撮影距離を求める。
 この距離は、過去記事の大きさと距離のわかっている被写体に対して所望の大きさで撮影するのに必要な焦点距離の式を使えばわかるが、単純に換算倍率倍になる。m4/3の場合は2mだ。
 この条件では
δ = d*f^2/(R*m*F*(R*m+d))*m
δ = 1000*50^2/(1000*2*1.4*(1000*2+1000))*2
δ = 0.595 [mm]
 となる。
 換算倍率ぶんだけ小さくなるような単純な計算にはならないが、他の距離条件でもボケは小さくなる方向だ。

 以上の計算から、経験上わかりきった話ではあるがやはりフォーマットサイズが大きい方がボケが大きくなることがわかる。2番目の条件だけは小フォーマットのほうがボケが大きいが、撮影される写真があまりにも違ったものになるのであまり参考にはならないだろう。

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